北越工業

 環境に配慮したエンジン発電機やコンプレッサーを展開する北越工業。東芝機械と東芝産業機器システムと共同で、発電量によってエンジンの回転数を変える次世代の省エネするエンジン発電機「VSG28A」を開発した。スマートグリッド(次世代電力網)分野にも応用できる可能性を秘める。圧縮した空気に潤滑油の成分が入らない「オイルフリー」で、省エネを見込める屋外設置型のコンプレッサー「SMADシリーズ」の拡販も進めている。環境対応の製品ラインアップを拡充し、競争力の強化を狙う。


燃費 最大60%改善、スマートなエンジン発電機

 「いかに少ない燃料で発電できるかにこだわった。」開発部開発グループの金井潤一主管は、省エネするエンジン発電機「VSG28A」の開発コンセプトをこう説明する。
 北越工業は土木・建設業者が工事現場などで使用するエンジン発電機を開発し、オイルフェンス一体型や可搬型、極超低騒音型を提供している。国内のエンジン発電機市場では30%を超えるシェアを持つ。ただ、従来のエンジン発電機の場合、周波数を一定に保つためにエンジンの回転数を固定しており、発電機の負荷が少なくても燃料を消費してしまうことが課題だった。そこで、省エネする発電機の実用化に乗り出した。
VSG28Aは非常用電源やEV充電への利用も見込む
 「開発する上で、電気を多く使用するときに合わせエンジンを働かせるようにした」(金井主管)という。発電量に応じてエンジンの回転数を制御する「スマート」な発電機で、発電機に負荷がかかっていない場合はエンジンの回転数を落とすことで燃料の消費を抑える。従来の発電機に比べて燃費を最大約60%改善した。直流から交流に変換するインバーターも搭載して省エネにつなげた。また、起動する際に定常運転よりも多くの電力が必要なモーターなどの機器にも対応する。
 同社は今後、開発した発電機の展開に向けたマーケティングなど、顧客を開拓する取り組みを本格化する。防災意識の高まりに伴う非常用電源としての設置に加え、電気自動車(EV)の充電インフラとしての利用も見込む。スマートコミュニティー(次世代環境地域)を支える役割も担うことになりそうだ。

屋外設置でコスト減 オイルフリーコンプレッサー

小型コンプレッサーの需要増加に伴い、
ラインアップ拡充を進める
 エンジン発電機とともに同社の主力機器がコンプレッサーだ。国内のエンジンコンプレッサー市場では80%以上の圧倒的なシェアを誇る。販売促進部の石田俊司部長は「モーターコンプレッサーの屋外設置型でのラインアップは他社より先行している」と胸を張る。
 ニーズが高まっているのが屋外設置型のオイルフリーコンプレッサー「SMADシリーズ」だ。潤滑油の成分を含まない圧縮した空気をさまざまな機器に供給可能。食品、医薬品、半導体製造など厳重なエア品質が求められる工場での需要が高い。
 屋外に設置できることが工場の省エネにつながる。コンプレッサーから熱が発生するため、工場内に設置すると室温を一定に保つために冷却などの対策が必要になりコストがかかってしまう。SMADシリーズは重要な制御部分に水が入らない構造で屋外設置に対応し、省エネ効果を高められる。
 これまで工場では大型のコンプレッサーを導入して工場全体で使用することが多く、必要以上に出力の高いコンプレッサーを設置するケースが多かったという。最近では複数の小型コンプレッサーを工場に分散して設置するニーズが高まっており、同社は今後コンパクトなコンプレッサーのラインアップを拡充する考えだ。今のところ屋外設置型でオイルフリーのコンプレッサーを手がけている企業は少なく、同社は先行してSMADシリーズを展開し、同市場のシェア拡大につなげる。
 省エネや環境に配慮したモノづくりを加速する北越工業。自社の競争力を高めるとともに、発電機やコンプレッサー業界をリードする。
市場ニーズを敏感に察知した製品開発を進める(本社工場・新潟県燕市)



<インタビュー>

北越工業社長 吉岡 謙一

省エネ型、時間かけて製品化

― 省エネ型のエンジン発電機を東芝機械、東芝産業機器システムと共同開発しました。
 「開発の話が持ち上がったのが今から5年前だ。一般的なエンジン発電機の場合、周波数を一定に保つためにエンジンの回転数を固定して運転しており、発電機に負荷があまりかかっていなくても燃料を消費していた。そのため省エネする発電機を製品化したいと考え、当社の技術者の思いもあって開発に取り組んだ。関係者からは半年ほどでできあがるとの見通しだったが、実際は4年かかった」
― 思ったよりも開発期間が長かったのでは。
 「時間をかけて製品化したのはうれしいことだ。それだけ他社が簡単にまねできない発電機を開発できたためだ。難しければ難しいほど、他社がなかなか近づけないレベルの製品ができあがる。『できないという理由がない限り、できるはずだ』との思いで取り組んだ。東芝機械と東芝産業機器システムに開発に向けた要求を出した際に、2社とも『できない』と言わずに開発に携わってくれた。各社がかかりっきりになって作り上げ、技術者冥利(みょうり)に尽きる発電機だ」
― これまでとは異なるコンセプトの発電機です。
 「発電量に応じてエンジンの回転数を制御する仕組みだ。燃料の消費量を最適化でき、従来のエンジン発電機と比べて燃費を最大約60%改善した。省エネに向けてはインバーターによる出力の制御も重要だ。開発した発電機が認知されるにはある程度時間がかかるだろう。どのようなお客さまを獲得できるか見通せていない部分もあるが、災害時の用途としての展開も期待できる」
― 顧客の開拓戦略は。
 「東日本大震災の発生で改めてクローズアップされたのが発電機だ。社会の根本的なインフラとしての電気がこれほど必要不可欠なものとして重要視され、その補完的役割としての発電機が脚光を浴びた。その中でこの新型発電機のパフォーマンスが、こうしたニーズにうまくはまってくれればと考えている。各自治体での防災体制の強化に向けた設置も見込める。またEVの充電にも利用できる」
― 圧縮した空気に潤滑油の成分が入らない「オイルフリー」で屋外に設置できるコンプレッサーも販売しています。
 「業界にないコンプレッサーとして製品化したのが『SMADシリーズ』だ。オイルフリーのため、食品、医薬品、半導体製造などの工場でニーズが高い。他社製のコンプレッサーと比べてコンパクトで使い勝手がよく、屋外に設置できるため機動性が高い。これまで大型のコンプレッサーを工場全体で利用していたが、小型のコンプレッサーを複数台導入し、分散して設置することで大きな省エネ効果を得られる。そのためSMADシリーズもコンパクトな製品の品ぞろえを重視する」


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