■概 要 |
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半導体設備関係のバルブを生産するTKSCTは、韓国の半導体産業の発展とともに成長を続けてきた。売上高は2009年が200億ウオン、10年は前期比4・3倍の870億ウオン、11年は同19パーセント増の1040億ウオンと好調に推移。売上高の20パーセントを占める海外輸出事業も好調で、こうした需要増に対応するために、釜山で追加投資を決めた。
『花田外国人専用工業団地』に1,450万ドルを投じ、敷地面積5,500坪に2,500坪の新工場を建設、9月にも完成する。従業員260人のうち、加工盤部署など約100人を新工場に配置転換する。新工場には加工機械60-110台を移転するほか、クリーンルームを整備する計画だ。 |
■進出背景 |
TKSCTは95年、韓国企業(株)泰光のバルブ事業として釜山でスタートした。08年に分社化。09年に、半導体製造装置用など精密バルブ機器の有力メーカーである日本企業、フジキン(大阪市北区)の100パーセント子会社となった。
顧客の多くは韓国内半導体メーカーで、サムスン電子、SKハイニックス、LGグループら国内大手の新規投資に、売上が大きく左右される構造である。特にサムスン電子向けは売上高の50パーセント以上を占める。半導体設備向けは品質要求も厳しいうえ、「シリコンサイクル」と呼ばれる大きな景気循環もある。事業安定化のため、11年8月には造船、原子力、火力、風力発電向けの一般産業用のバルブ事業を始めた。生産アイテム数の増加に伴い、新しい工場が必要となっていた。
また、11年3月の東日本大震災で、フジキンの生産拠点、筑波フジキン研究工場(茨城県つくば市)が大きな被害に遭ったことも背景にあるようだ。Jun Yeoup,Gu総務部次長は「品質だけなら日本の方が良いが、単価があまりにも高い。生産機能の中心は韓国にし、今後はSCTで高品質のモノを安く作り、世界中に輸出する輸出拠点にしよう、という計画もある」と話す。こうして、韓国内で新工場のための土地探しを始めた。 |
■釜山市に決めた理由 |
とはいえ「釜山市以外での投資は考えられなかった」(Gu氏)という。
バルブの素材となるステンレスは日本から輸入しているし、親会社から半製品を輸入することもある。
「空港も近く船もすぐ利用できる」(Gu氏)立地は他にない。 |
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■メリット・デメリット |
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新工場は現工場から直線距離で1キロメートルほどの場所。
素材や製品の運搬コストを抑えられるほか、管理責任者が気軽に見に行くこともできる。
従業員用に出している通勤バスの運行ルートである大通り沿いであることも大きい。「我々の事業は、周辺企業の集積が重要」(Gu氏)と指摘する。
同社は一つのバルブを作るにあたり、部品や図面などを外注し管理している。こうした協力会社と、これまで同様の取引を続けられる。 |
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