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社内全体でレベル向上

 日立システムズは、サーバや現金自動預払機(ATM)の保守技術を競う社内大会「サービススキルコンペ」を2月に開いた。今回が3回目の開催で、全国のサービス拠点から選ばれたカスタマーエンジニア(CE)37人が、技術はもちろん、提案力やコミュニケーション力などのレベルを競った。競技は「ブレードサーバ」「PCサーバ」「金融端末」の3部門で実施。各部門の優勝者へのインタビューを通じて、顧客満足度を高めることに心血を注ぐCEたちの思いに迫った。

実践同様、限られた時間内で対応する
(関西支社 井上純さん)
お客様への提案力も問われる
(金融プラットフォーム事業部 三田宗一郎さん)

顧客対応力、技術力、提案力を競う

正確な作業が求められる
(関西支社 松本明さん)
 IT機器に障害が起きたと顧客から連絡を受けると、すぐに現場に駆けつけて復旧する。CEは、IT機器が不可欠な現代社会を支える存在だ。サービススキルコンペは、そうしたCEの業務レベルを審査し、優勝者の姿勢を社内全体で共有して全社的なレベル向上を図る目的で、毎年、開催されている。顧客への訪問に始まり、障害状況などの聞き取り、復旧作業、報告書の提出、終了報告と、日々の業務をなぞる形で行われるのが特徴。顧客役の審査員を前に緊張で手が震えている選手もいて、競技に臨む選手への重圧がうかがえた。
小坂廣武専務執行役員
 審査には、顧客満足度向上には技術だけでは足りないという同社の姿勢が反映されている。身だしなみやマナーの審査は外部の専門会社に依頼。終了報告時に顧客役が「何か提案はありませんか」と選手に問うなど、障害を直すだけでなくCEとしての総合力が試される。小坂廣武専務執行役員は「顧客対応力、技術力、提案力の3点が問われる」と説明する。
 競技終了後、選手は審査員と向かい合い、内容のフィードバックを受ける。評価や感想を審査員が選手に率直に伝えることで、選手の長所や課題が浮き彫りになる。選手も、競技中に行った行動の意図や狙いを伝えることにより、さらなる成長が促される。


<ブレードサーバ部門優勝>

マナーと対話に重点を

公共・社会事業グループ 社会プラットフォーム事業部
サービス本部第三グループ
桑野 翔伍さん

― 優勝できたポイントは何ですか。
 「ベテランの方が何人もいらっしゃるので、技術ではなくマナーを強みとして臨み、それを発揮できたことが理由だと思います。普段からお客さまの要望をしっかり聞くようにし、会話のキャッチボールを心がけていますので、それが信頼を得ることにつながると思っています。受け答えの最後には『以上ですが何かありませんか』と確認を入れるようにしていて、『何もない』との返事を引き出せるかが、でき具合のバロメーターです。大会でもそれができました」
― どのような障害に取り組みましたか。
 「サーバの電源2カ所のうち片方がエラーになり、予防で部品を交換するという内容でした。ただ、実際にお客さまへ問診すると、あるデータ領域にアクセスできないトラブルも発生していると申告されました。その他、お客さまが気付いていない障害も作業中に発見しました。こうしたことは実際の現場でもあります。当初の課題である電源交換だけでなく、お客さまが気付いていない他の障害も含めて対策に取り組みました」
― 大会を通じた発見や成長はありましたか。
 「最も得られたのは自信です。今まで自分が正しいと思っていても客観的に確認できませんでしたが、優勝という形で確認することができました。障害情報の迅速な取得方法を助言いただくなど、作業方法の改善点をいくつか指摘されたことも収穫です。一方で、部品を交換する際に取り違え防止のために目印を付けることを忘れるなど、細かいミスがありました。そうした点はまだまだ甘いと思います」
― 自身の経験を周囲にどう伝えますか。
 「私の職場は、上司や先輩が気さくに話しかけてくれて、アットホームな雰囲気があります。気になった点をすぐに聞くこともできる一方、改善点を指摘されることもあり、コミュニケーションがしっかり図れています。こうした日ごろの指導が今回の結果にもつながったと思います。大会ではマナーについて高い評価をいただくことができ、それを他にも広めるとともに技術面でも競技で得たより良い手法を自部署にフィードバックしていきたいと思います」


<PCサーバ部門優勝>

常にお客さまの立場で

サービス本部 神田オフィス 神田営業所
水野 博文さん

― 優勝できたポイントは何ですか。
 「事前選考を含めて私より優秀な方が多くいる中で優勝できたのは、実際のお客さまに対応する時と同じように、普段通りに臨めたからだと思います。始まる前は緊張しましたが、実際に始まってからはほとんど緊張せず、頭の中では本当のお客さまを相手に保守作業をしていました」
― 障害への対策はうまく立てられましたか。
 「複数の障害が発生したなかで、お客さまへの聞き取りで何が起きているか現象をしっかり把握したことで、スムーズにアクションプランが浮かび、対策することができました。実際のお客さま先での障害対策の経験が生きたと感じました」
― 大会への出場により、どの部分が成長できたと思いますか。
 「技術はもとより、お客さま対応が気になっていましたので、出場にあたって普段の言葉遣いやマナーを見直しました。話すときに『だと思います』など曖昧(あいまい)な表現が多かったので、意識的に直すようにしました。お客さまに不安を与えない分かりやすい言葉遣いと対応が身に付いたこと。これが一番の収穫です」
― 顧客への提案はどのように行いましたか。
 「お客さまのシステムにとって、妥当で現実的な内容を提案できるよう心がけています。今回は震災の影響で電力不足が想定されていることもあり、長時間の停電を想定したバッテリー導入など、具体的な内容を提案しました」
― 普段は提案能力を養うためにどのようなことに取り組んでいますか。
 「仕事を離れたプライベートで、自分がお客さまの立場になったときの相手の対応に注目し、他業種の方の言葉遣いや表現をチェックしています。常に意識していないと気付かないこともありますが、良いと感じたことはどんどん吸収し、不快に感じた対応は絶対に自分ではしないことを心がけています」
― 自身の経験を周囲にどう伝えますか。
 「大会出場に意欲的な後輩がいますので、経験者として支援・育成にあたりたいと思います。技術は社内の教育システムを受講したり、経験を積むことで習得できますが、お客さま対応は意識を変えなければ直すことが難しい面もありますので、自分が評価されたお客さま対応のポイントを伝え、気付きを与えてお互いに研鑽(けんさん)していきたいと考えています」


<金融端末部門優勝>

客観的な指摘で気付く

中部支社サービス本部 三重支店四日市営業所
大矢 靖さん

― 優勝できたポイントは何ですか。
 「当日の課題は、ATMにクリップが混入し、現金が出金できなくなるという事象でした。普段起こりうる障害に近い内容で、過去に同様の障害に対応した経験があったことが大きかったと思います」
― 失敗した部分もあったとのことですが。
 「お客さまに障害の内容を聞き取る際、『その他に何か問題ございませんか』と聞いておけば良かったと思います。作業終了時にそれを確認したため、新たに二つの障害が判明して、残り時間内にそれらに取り組むのが大変でした。最初に聞いておけば同時に複数のテストができました」
― 競技後のフィードバックでどのような収穫がありましたか。
 「審査員の方からは、操作のスピードが速すぎるので最終確認の際に十分な余裕を持っていないと指摘されました。現場では1人で作業するので、自分に課題があっても気付く機会は少ないと思います。お客さまからのご指導もあまりありません。今回は客観的な立場から問題点を教えていただき、気付きの場になりました」
― ATMの保守作業で大切なことは。
 「現金を取り扱う機械のため、障害対応時にはお客さまと一緒に考えることも必要です。お客さまの業務を理解するとともに、適切なアドバイスができることも重要です」
― 日ごろから、顧客への提案能力をどのように養っていますか。
 「お客さま先に出向いた際の気付き訓練や、提案力を高める教育を受けています。製品の情報を深く理解するのはもちろん、全国の提案事例から参考になる内容を共有しています。お客さまに出向いた案件以外にも、今後起きると見られる障害を見越して対策を提案することもあります」
― 大会を通じて成長できたことはありますか。
 「大会に臨むために集中して勉強できました。普段は後方支援に頼ることもありますが、自分の知識だけでやりきれたことは大きかったと思います」





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