羽田空港の国際化で魅力高まる横須賀の工業用地 -横須賀市経済部企業誘致・工業振興課 課長 佐藤充義氏に聞く

横須賀工業用地地図

安・近・短の地の利を生かしたい

 横須賀市が企業誘致で攻勢に転じようとしています。来年度から向こう10年を展望した基本計画と産業ビジョンを始動させ、電気自動車関連など次代を担う新産業を呼び込み、雇用機会の拡大を通じて人口流出や高齢化に歯止めをかけようとしています。市内には電力中央研究所がある南西部の長坂工業用地をはじめ、情報通信関連の研究機関が集結するYRP(横須賀リサーチパーク)、久里浜港などに売り出し中の物件があり、市の企業立地促進制度も充実しています。首都圏に近接する地の利をどう生かしていくのか。横須賀市経済部企業誘致・工業振興課長の佐藤充義さんに、企業誘致の基本姿勢や市内に立地するメリットなどを伺いました。

-新産業ビジョンやアクションプランの策定を進めておられますが、企業誘致にはどのような姿勢で取り組みますか。

 「横須賀市が企業誘致を進めるうえで製造業は基本中の基本といえるでしょう。横須賀の産業のかたちを作り上げてきたのは、何と言っても製造業だからです。しかし、その中身は時代とともに変わりつつあります。日産自動車は追浜工場を電気自動車の世界のマザー工場にしようと動き出しました。横須賀市に本社を移した東芝ライテックは、東芝発祥事業の一つである白熱電球の製造を中止し、発光ダイオード(LED)の電球メーカーに生まれ変わろうとしています。できれば、そうした新技術と連携しながら、既存の製造業に刺激を与え、製造業の間口を広げてくれそうな企業に進出してもらいたいと考えています。一方で産業構造の転換が少しずつ進みつつあるのも現実であり、誘致の対象を製造業に絞るつもりはありません。YRPに進出している情報通信関連の研究機関なども歓迎します」

佐藤充義氏

-横須賀市には、立地奨励金や雇用奨励金など手厚い企業立地促進制度があります。

 「市内に新たに立地したり、拡大再投資したりした企業を対象に、さまざまな奨励措置を設けています。長坂工業用地などの工業系地域に製造業が進出するのであれば、土地や建物、償却資産などを含む投下資本額の10%以内を最大5億円まで交付します。情報通信業やサービス業では、学術・開発研究機関が対象になります。ただし最低投資額が中小企業では2億円以上、大企業では5億円以上という条件がつきます。また新たに横須賀市民を正社員として1年間継続雇用した場合、5人以上雇用した中小企業や15人以上雇用した大企業には、正社員一人につき30万円を最大3000万円まで交付します。市民の雇用機会の拡大を狙いとしています」

―首都圏に近接する横須賀市は、地の利の良さもセールスポイントになります。

 「安・近・短が企業誘致を進めるうえで一つのキーワードになります。首都圏から近い割に、首都圏の他の地域に比べ、地価はそれほど高くありません。しかも羽田空港からほぼ1時間の距離にあり、10月から羽田空港に国際線が開設されるとアジアとの時間的な距離はぐっと短縮されます。海路を使ってもらうと、地の利の良さを一番実感してもらえるでしょう。久里浜港で荷降ろしすれば、超過密な浦賀水道を通らずに済むため、物流にかかる時間は大幅に短縮されます。また首都圏に近接しているため、従業員の転居を伴わずに、都内から本社工場などを移転することができます。すでに横須賀市内に拠点をお持ちの企業のなかで、本社工場やマザー工場として集約統合したいというご要望があれば、十分応えていけると思います」

―吉田雄人市長は、自ら企業誘致の先頭に立っておられます。

 「マニフェストでも、地域経済を活性化するには新しい企業を誘致することが大事だと言っており、率先して横須賀市を売り込むシティセールスに力を入れています。横須賀に興味を示す企業や、市内の工業用地を視察したいという企業があれば、自ら説明に出向いたり、お迎えしたりする考えです。チャンスがあれば海外へも出かけていきます。先代の蒲谷亮一市長は韓国へトップセールスに出向き、羽田空港の国際化でソウルから横須賀までの所要時間は3時間になると、近さをPRしたことがあります。その時の縁で大韓貿易投資振興公社(KOTRA)など韓国の経済団体とは今も定期的に情報交換しています」

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