中小製造業の事業創造支援

東京都西部に位置する多摩地域。中小企業が集積し、東京のモノづくりをリードしている。多摩地域の中小企業は独自技術を磨き、企業間・産学連携に取り組み、好不況の波を乗り越えてきた。ただ、コロナ禍の影響や原材料高騰など、企業を取り巻く状況は依然厳しい。こうした中、中小製造業に焦点をあてた新たな支援活動が活発化している。

経営者OBら活用専門家派遣に注力

技術専門対応 相談員を配置

多摩地域において東京都は東京都商工会連合会と連携し、主に製造業の中小企業を対象とした「事業創造」の支援拠点「多摩・島しょ事業創造支援拠点(T2BizX、ティーツービクロス、拠点オフィス東京都立川市)」を2023年6月に開設した。事業者自身が新市場を見つけ、自ら行動することを事業創造とし、その挑戦を支援していく。

支援内容の詳細は新市場進出や事業革新、事業・業態転換、人材の確保・育成など。これらの取り組みを通じ、将来の事業承継につなげる。窓口となる「ナビゲーション・TAMA」は都の中小企業支援施設が集まる「産業サポートスクエア・TAMA(東京都昭島市)」内に設けた。

同拠点には相談を受けるコーディネーターを4人配置、うち1人は技術専門に対応する。ナビゲーション・TAMAではコーディネーターが常駐し、事業創造の可能性を探る窓口相談に対応するほか、企業への訪問支援なども行う。23年末時点で相談支援実績は33企業に達した。

DX・GXなどテーマ別に活動

今後はグループ活動による支援に力を入れていく。デジタル変革(DX)、グリーン・トランスフォーメーション(GX)、人材育成、女性活躍といったテーマ別にグループを作り、定例会・研修会などを開催し、ビジネスアイデア創出につなげる。希望があれば講師の選定や会場確保等の支援も行う。

事業創造のサポートでは23年9月に東京都商工会連合会が創設した「多摩ものづくり応援団」と協力していく。同応援団には中小企業経営者OB4人を含む研究者、支援機関職員ら11人が参加。団長には相馬光学(同日の出町)会長の浦信夫氏が就任した。

浦団長が「多摩地域でモノづくりに関わる縁を大切に、情熱と技術、人をつないで中小企業が発展していけるよう全力で応援したい」と力強く呼びかけ始動。年3回程度「ものづくり応援会議」を開き、多摩地域のモノづくりの現状・課題について議論する。

現在、同会議は2回を終え、中小企業の事業創造支援、産学公連携の推進、多摩地域企業の情報発信が一層必要だとして、今後の活動に反映していく方針だ。24年3月には3回目の会議を開く。

専門家派遣も今後、注力していく支援のひとつ。経営者が経営者を支援するといった方法も検討している。ティーツービクロスの斉藤彦明チーフコーディネーターは「23年度末に向け、まずは支援窓口でのグループ活動による支援と専門家派遣に注力して展開していきたい」としている。

中小製造業の事業創造を支援する新たな拠点の設置により、専門家や経営者OBらといった多摩地域の潜在力を生かした総合的な取り組みが期待される。

「たま工業交流展」来月開催131者が出展

立川会議所など商工団体主催

立川商工会議所をはじめ東京・多摩地域の商工関連団体は2月21、22の両日10-16時に「第21回たま工業交流展」(日刊工業新聞社など後援)を東京都立多摩職業能力開発センター(東京都昭島市)で開催する。機械・金属・電気機器などの中小企業や学校関連を含めた131社・団体が製品・技術を展示する。入場無料。出展企業と商談できる「ビジネスマッチング」は事前申込制で、会場内に専用スペースを確保する。

両日とも展示会場に隣接する東京都中小企業振興公社多摩支社セミナールーム(同)で、東京都商工会連合会が講演会を開く。21日は「価格転嫁15のテクニック」をテーマに中小企業診断士の初鹿野浩明氏が講演。22日は「業績をV字回復させる秘訣(ひけつ)とは」をテーマにプロ経営者のハロルド・ジョージ・メイ氏が登壇する。参加無料。定員は各100人。

また、23日には同展を行う都立多摩職業能力開発センターで、小・中学生、高校生を対象とした「たまロボットコンテスト」を開催する。

【2024年1月18日付】

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