観光客誘致 多摩の魅力アピール

東京都の西部に位置する多摩地域。都内でありながら多くの自然に恵まれ、奥多摩や高尾山など訪日外国人客(インバウンド)が回遊できる観光資源が多く存在する。多摩地域の商工・観光・農業などに関する76団体が加入する多摩観光推進協議会では、さまざまな取り組みで地域の魅力を引き出し、産業活性化に貢献している。同協議会は本年度も新たな企画を多数展開し、観光客誘致を図る。

旅の体験動画 案内役に外国人地酒楽しむイベント企画続々

多摩モノレールで「地酒列車ツアー」を楽しむ外国人

インバウンドを意識した取り組みでは情報発信プロジェクトに力を入れる。同協議会が運営するサイト「Another TOKYO TAMA(AT-TAMA)」で、多摩の旅を体験する動画の案内役に外国人を起用。観光ルートを巡り、食事やアクティビティ、文化・歴史体験を外国人の視点で身近に感じられるようにする。

さらに、AT-TAMAでは多摩のフォトコンテストを企画、外国人に勧めたいスポット、グルメなどの投稿を募るとともに、飲食情報ページも充実していく。このほか、フリーペーパーをインバウンドの目につきやすい羽田空港や都内観光案内所に設置する。同協議会事務局では「視覚に訴えた方が、より効果がある。分かりやすく作れば手にとってもらえる」と新たな情報発信の効果に期待する。

観光ルート開発プロジェクトでは、地酒作りの拠点を巡るスタンプラリーを展開する。多摩地域には日本酒の酒蔵が数多く所在。同協議会は2年前から貸し切り列車で地酒・地域食材を楽しむ「地酒列車ツアー」を行ってきた。日本酒の酒蔵のみが対象だったが、今年からは地ビールの醸造所なども対象に加え、スタンプラリーに再構築する。

産学官などで構成する団体「美しい多摩川フォーラム」が展開している「多摩川酒蔵街道5つの酒蔵めぐりスタンプラリー」と連携。多摩を代表する小澤酒造(青梅市)など五つの酒蔵に加え、日本酒、地ビール、地ワインなど地域の酒造り14拠点程度のスタンプを集めるイベントを展開する。

多摩には老舗酒蔵が多く所在する(小澤酒造の酒蔵)

協議会事務局は「多摩地域に知られていない小さな酒蔵はいくつもある。見学の受け入れは難しいが、スタンプラリーなら協力できる」とし「つまみにも極力地元食材を使うことで、多摩の食文化への理解が深まる」という。貸し切りバスを使い、酒蔵をめぐるモニターツアーも実施する予定だ。

自然・地域食材など情報発信 訪日客に分かりやすく

2021年から継続しているのは自転車で多摩地域の観光スポットをめぐる「ライドアラウンド in 東京多摩」。スマートフォンにアプリをダウンロードしてエントリーするデジタルスタンプラリーで、多摩全域に360カ所以上のスポットを設ける。今回から謎解き要素をプラス。地元の食品などを賞品とし、ファミリー層を取り込む。

ほかには、電動スクーターを使い観光客の利便性向上を図る国連の持続可能な開発目標(SDGs)を活用した観光ルートモニターツアー。学生のアイデアを生かしたマイクロツーリズムモニターツアーなど、多彩な企画を用意している。

多摩地域では22年、八王子市に「東京たま未来メッセ(東京都立多摩産業交流センター)」が開業した。地区最大級の展示室を備え、MICE(会合・報奨旅行・国際会議・イベント)誘致に追い風となっている。同協議会事務局は「多摩地域で国際会議が開かれれば、会期前後に観光プログラムを組む。国際会議の誘致と観光ルート開発をセットで行うことがインバウンド誘致には有効だ」と分析する。

【2024年7月18日付】

ページのTOPへ