先進技術の集積地 オンリーワンのモノづくり、東京・多摩

東京・多摩地区は古くからモノづくり企業の集積地として栄える。近年では計測・分析機器を代表とする製造業が多く集まるが産業構造の変化に伴い大手企業の生産工場の閉鎖が相次いでいる。一方で生産機能としての役割だけでなく高度な技術を生かした受託開発や教育機関との連携、企業の研究開発拠点になりつつある。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の開通と共に物流拠点としての存在感も増す多摩地区の取り組みを紹介する。


立地のよさを生かし研究開発拠点が集積

八王子市は1960年頃から市街地周辺に工業団地ができ産業の工業化が進んだ。都心部から広い土地を求め現在のオリンパスやコニカミノルタホールディングスなど大手企業が進出した。北八王子工業地域など合わせて11カ所の工業団地がひしめく。さらに多摩地区から埼玉県南西部、神奈川県中央部に位置する広域多摩地域は、電機や電子などハイテク分野を中心に製造業の集積地となっている。

八王子市は2004年から企業立地支援条例を定め今年で101件を支援した。市内で事業施設の新設や拡張、設備の増設など一定規模の企業立地に対し固定資産税などを奨励金として還付する。さらに研究開発を主体とした企業立地にも力を入れる。八王子市は大学など契約に基づいた連携で共同・委託研究や技術相談、大学が保有する機器の利用や依頼検査の費用を助成し、市内中小企業の研究開発を支援している。八王子市は本社機能が集中する都心部に近くアクセスしやすい。緑が多く住まいと職場が近い立地条件を生かし研究開発拠点を移す企業が増えている。

隣接する日野市もまた研究開発拠点としての役割が増している。かつては日野自動車をはじめ大手企業が集積し生産工場の拠点として機能したが、産業構造の変化と共に徐々に製造出荷額は減少傾向にある。日野市も企業立地支援制度を策定し事業所を新設する企業を助成するが、企業が互いに連携してビジネスを生み出す内発的産業創出の支援に力を入れ始めている。工場などの施設の設置や拡張だけでなく研究開発など新たな産業創出を図る目的とした事業者に産業創出施設設置奨励金で支援する。さらに市内の多摩平の森産業連携センター「PlanT」を設立し、市民や企業、大学、起業を目指す人たちが、新しいアイデアや知識、経験を持ち合わせて革新的な新事業や技術、サービスの創造を目的に設立し、新ビジネス創出の機運が高まっている。

ハードからソフトの支援へ

青梅市は昭和中期以降、繊維産業の衰退と共に、東芝など大手企業が西東京工業団地に集積、さらに重工併用の三ツ原工業団地ができ約70以上の事業所が集まる。2017年3月に閉鎖した東芝の青梅工場のように野村不動産が大型物流拠点にすることが決まり、新たな産業が生まれる動きもある。一方で、企業の撤退後に住宅やサービス関連の店舗が入り、住環境と工場が混ざり合う事態も発生している。住宅が建った土地には新しい工場が入ることは難しく、製造業の操業環境が減少する原因になっている。青梅市には工場を誘致する十分な土地はない。1000平方㍍超える土地利用の問い合わせが定期的に入るが案内ができないのが現状だ。

青梅市は商工業振興プランを策定し、3年間の具体的な実施計画を検討中だ。青梅市を代表するフラッグシップとなる企業を選定し、そのノウハウを共有する試みで、企業の成長を支援する。外部からの企業誘致ではなく、市内の企業が十分成長できるような施策に取り組むという。

大手企業の本社が集まる昭島市も同様だ。日本電子など大手企業が1950―60年代からJR青梅線の中神駅北部に集積。中神工業団地とも呼ばれ製造業が多いのが特徴だ。しかし現在は企業立地に適した広い敷地はないため企業誘致などは行っていない。代わりに市内に根付く企業との関係性を深める連携強化策に重点を置く。昭島駅北口の昭和飛行機工業の跡地が「モリタウン」になるなど、かつての工場が商業を中心とした街に変化し、住民と工場の共存が避けられない。そこで昭島市は騒音対策や環境改善に関する設備投資を支援対象にする。行政が積極的に企業の操業など環境面でサポートする。住民の理解を深めてもらうために、市民と事業所との協同の機会を増やす。小学生の工場見学の受け入れや出前授業の開催、地元の雇用創出に力を入れ、住民と企業双方にとってメリットのある方法を模索する。企業と住民の相互理解を深め、昭島市の「人財」育成につなげる。

圏央道開通で多摩地区が物流拠点に

首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の開通を新たなビジネスの好機と捉える動きもある。圏央道の八王子西インターチェンジ(IC)に近い川口地区物流拠点(東京都八王子市)の整備計画が進む。172㌶の土地を自然と共存する形で流通業務ゾーンを整備する。圏央道を介し、羽田空港や成田空港、周辺港湾をつなぎ、インランドデポ(内陸保税蔵置場)としての機能や大規模用地を活用した物流拠点整備の計画が持ち上がる。圏央道の開通を機に物流をはじめ新たな産業創出が多摩地区で広がりつつある。

【2017年6月16日付】