インタビュー

東京都商工会連合会会長 

村越 政雄

働き方改革 多摩に追い風

経済活動に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス。先行き不透明な状況は現在も続き、中小企業の経営環境は激変した。こうしたなか多摩地区の各企業は知恵を絞り、技術を磨き、他者と連携するなどして事業継続・発展の道筋を探っている。東京都商工会連合会は多摩地区21、島しょ部6商工会をまとめ、経営指導や講演会などを通じ中小企業を支援する。3期連続で同連合会会長を務める村越政雄氏に、多摩地区産業の現状や振興策について聞いた。


セカンドハウスでテレワーク

受け皿づくりに商機

-多摩地区の現状をどう見ますか。

「多摩地区の商工会には中小企業に加え、小規模・零細企業も加入している。小規模・零細企業の半数以上は飲食関連だ。新型コロナの影響で飲食関連では初めて忘年会・新年会のない年末年始を経験した。飲食系の企業にとって年末年始は年間の売り上げの約30%を占める場合もあり、それが無くなるというのは大変なこと。リーマン・ショックや東日本大震災など危機はこれまでにもあったが、これだけ大きく全国的にダメージを与えるものはなかった」

「誰もかつて経験したことのないような不況で、どう対処したらよいか分からずにいる。コロナの影響は、すでに1年間続き体力が落ちている。影響が長引くことを非常に危惧しており、細かな目配りと相談体制の整備を商工会の会長にオンラインで通達した。具体的には国や自治体への支援のお願いや、政策について企業に周知できるよう地道な活動を続けることが役目だと考えている」


-何か打開策はありますでしょうか。

「多摩地区ということを考えるとこれはひとつの転機でありチャンスだともいえる。立川市以西は人口減少が目立つ。人口が減っていくことは危機だが、それを元に戻そうと考えず新しい方向に転換する。切り口は働き方改革。在宅勤務に関して経営者と働く側の考え方が変化した。例えば都区部に通勤していた人が在宅で仕事ができると分かった今、コロナ収束後も完全に元には戻らないのではないか」

「企業としては理想的なテレワークの形を考える。都心は地価が高くスペースも少ない、多摩地区にセカンドハウス的な要素を持ったテレワーク拠点があってもよい。福生市から奥多摩町にかけては自然環境を好む人に向け、テレワーク拠点としての需要が出てくるだろう。その受け皿をつくることによって、新しい多摩の道が開ける」

企業拠点 整備・近郊観光に注目

-製造業に関しての新たな可能性は。

「多摩地区の製造業は下請けの割合が多い。ひとつの理由は起業しようとする人が多摩地区を選ばないからだ。ただ、起業する際に求める条件が従来とはまったく違ってきた。『自然回帰』や『安全・安心』といったもので、従来のように経済活動のみを優先しようとしなくなった。今後、多摩地区が選ばれる機会が増えるだろう」

「それには大手企業が数万坪を1社で占有するのではなく、起業したばかりの会社が入れるような工業団地を整備することが必要だ。自然・景観に配慮し、公園の中に企業が点在して一般の人々も入れるようなものがよい。100-200の区画はすぐに埋まるだろう。東京でそうしたモデルが成功すればアジアで展開できる。また、多摩地区の企業はもっと横の連携を密にした方がよい。さまざまな見本市が行われているが、もう一歩踏み込んだ仕組みが出来れば企業連携が進む。中小企業は力を合わせて足りない部分を補い、事業を進めていくことが大事だ」

-多摩地区の観光について魅力発信に注力されています。今後の見通しを教えてください。

「コロナで人々の活動が制限されるなか、都内近郊が見直された。これからの観光は従来の名所旧跡を求めるものでなく、概念が変わる。注目されているのは体験型の観光だ。多摩地区は登山、カヌー、SUP(スタンドアップパドル・サーフィン)、グランピングなどが体験できる。『箱もの』を作らないと人が来ないといった時代は終わり、知恵と労力、サービスが大事になった。さらに、人のライフスタイルやインフラなども観光のテーマになる。さまざまな観光に対応できる点で、多摩地区にはチャンスがある」

【2021年1月14日付】