複合素材開発サイトを開設、産業用繊維の製品化支援


【有識者インタビュー】
東京都立産業技術研究センター 多摩テクノプラザ 所長
澤近 洋史(さわちか ひろし)氏

東京都立産業技術研究センター多摩テクノプラザ(東京都昭島市)が企業の利用実績を伸ばしている。2015年度の依頼試験と機器利用は前年度比約6%増と増加に転じた。16年4-9月期も前年同期並みとなった。7月末には炭素繊維などの産業用繊維を応用した製品開発支援施設「複合素材開発サイト」を開設した。多摩テクノプラザの澤近洋史所長に利用状況や新サイト開設の狙いなどについて聞いた。


-利用実績が堅調に推移しています。

「15年度に多摩テクノプラザを利用していただいた企業数は、累計で前年度比15%増の約5600社となった。今上期も順調なため、昨年度の実績を超えることはできるとみている。毎年、新規の利用企業数が約700-800社伸びている。多摩テクノプラザの利用企業数が増えるということは、将来に向けてチャレンジする企業が増えているということ。東京・多摩地域の企業の底力を感じる」

-海外展開を意識した企業の利用が増えているようです。

「10メートル法電波暗室を備えた『EMCサイト』の利用件数が伸びている。電子機器からの不要な電波発生の測定や妨害電波による誤作動の検証などをする施設で、海外に製品を輸出する企業が第三者機関の規格適合認定試験で利用することが多くなっている。規格適合試験などの依頼試験および機器利用は、多摩テクノプラザ電子・機械グループ全体の40%を占めている。件数にすると、年間約5000件だ」
 「市場を海外に求める企業の増加は、1都10県1市の公設試験研究機関で構成する『広域首都圏輸出製品技術支援センター(MTEP)』への相談件数が増えている事からも分かる。MTEPは海外の製品安全等規格についての相談や情報提供、評価試験などの技術支援を手がけている。MTEPへの相談件数は14年度が約1000件だったのに対して、15年度は前期比25%増の約1250件に伸びた。MTEPに相談があり、多摩テクノプラザのEMCサイトを利用するケースも増えている」

-複合素材開発サイトを開設しました。狙いを教えてください。

「炭素繊維は自動車や航空機分野での利用が進んでいるが、同分野だけでなく、民生品への応用の期待感も高まっている。すでにパソコンなどの情報機器やX線検査装置の検査台などの医療機器、スポーツ・レジャー品などでの利用も始まっている。炭素繊維などの複合素材は大企業だけでなく、中小企業もチャレンジできる分野だ。産技研としても先行して支援設備を整えて、同製品の開発を後押ししたい。多摩テクノプラザの前身は都立繊維工業試験場だ。衣料用繊維の加工技術を産業用繊維に応用できる技術とノウハウを持っている」

-新施設の特徴は。

「高機能繊維や繊維強化複合材料の研究開発から製品化までを一貫支援できる施設として開設した。高機能繊維材料開発分野では、炭素繊維やアラミド繊維、金属繊維などの機能性繊維を織物や編み物、不織布のテキスタイル形状に加工可能。これらの繊維の織り方を工夫することで、電気導電性や強度、寸法安定性などの材料特性を自由に変えることができる。目的に合った材料の開発を支援するために、カーボン織機や炭素繊維を裁断できる自動裁断機などの新設備を導入した」

-この複合素材開発サイトの 売り は何ですか。

「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使った製品の市場規模は年々大きくなっている。企業の製品開発をサポートするため、炭素繊維で強化した熱可塑性樹脂と熱硬化製樹脂を成形できる設備を導入した。熱可塑性樹脂の場合、ホットプレスとコールドプレスでCFRP加工ができる。二つの樹脂に対応できる装置を設置しているのは、東日本地区の公設試験研究機関では多摩テクノプラザだけだ」
 「製品化には測定や分析などの評価が欠かせない。そのため樹脂内の強化繊維1本1本の径寸法(100分の1ミリメートル程度)や配向(繊維の向き)を精度良く測定する、スキャンサイズ200ミリメートル四方の高分解能X線CT装置などの分析機器も導入した。材料中の欠陥が非破壊で検査できる超音波検査システムや試料表面の元素分析などができるX線電子分光分析装置も設置した。繊維加工から成形・加工、分析・評価までをトータルで支援できる」

-15年4月の所長就任から1年半が過ぎました。

「多摩地域には、研究開発に意欲的な企業が多くあることが分かった。各企業が十分に能力を発揮できるように、多摩テクノプラザとして支援メニューの情報提供に力を入れていきたい。また東京都中小企業振興公社多摩支社をはじめ、多数の中小企業支援機関が同地域にはある。支援機関同士の情報共有を推進して、サービスの向上を図っていく」

【2016年11月28日付】