インタビュー
明星大学
学長落合 一泰

明星学苑は東京都多摩地域に根ざし、幼稚園-大学を擁する総合学苑。2023年に創立100周年を迎えた。多摩地域の大学には都区部など他地域にもキャンパスを置くケースが多い。そうした中、明星大学ではひとつのキャンパス(日野キャンパス、東京都日野市)ですべての学生が学ぶ。「多摩に根差し、地域に貢献する大学」をビジョンのひとつに掲げる明星大学の落合一泰学長に、特色や企業との連携などについて聞いた。

専門性・横断的視野を育成

データサイエンス必修に

クロッシング学修が好評

大学の特色や力を入れている教育は。
「理工系、人社系、融合系の9学部12学科1学環がひとつのキャンパスにまとまっている。この特色をどう生かすのか。重視したのが、それぞれの学生が自身の専門分野を深めると同時に、学部間の垣根を低くして相互に学びあう『クロッシング』という学修方法だ。卒業後、自分の専攻分野だけで、生きていく人はほとんどいない。他分野を学んだ人と協力し、一緒に企画を立て成果を出していくのが社会人。学生のうちにクロッシングを十分に経験しておくことが大切だ」
「クロッシングは学生にも好評だ。それぞれの学部の特色を身につけながら、他学部の学生と学びあうことで興味が広がりコミュニケーション力が磨かれる。学部横断型の初年次教育が成功しているので、2-3年生になって専門教育が深まった頃に改めて分野交差型の学修機会を提供していきたい。こうしたクロッシングを可視化・経験できる場として『MEISEI HUB』という多彩な学びの空間を図書館内に作った。仕切りのない広々としたオープンスペースのあちこちに学生・教職員らが集い、クロッシングを体感できる」

本学出身社長数 多摩地区で3位

明星学苑が100周年を迎え、大学は24年に60周年を迎えます。
「多摩に生まれ、多摩に育てられ、多摩に貢献することが、本学のアイデンティティー。100周年を機に多摩地域と深い関係を再確認しようと、23年秋に『多摩共創企画2023』と銘打ち四つのイベントを行った。ラボツアーも行う『産学交流会』も含め、多摩とのつながりを重視するテーマばかりだった」
「そのひとつ『明星出身社長が語る、社長のリアル』では本学出身の社長らがパネルディスカッションを行った。帝国データバンクが発表した『2022年東京都多摩地区社長出身大学ベスト20』によると本学は社長数で3位、在籍学生数比では上位5校の中でトップだった。これは多摩地域に根ざした大学であることの象徴だ」
「親族から事業承継した社長、社内で昇進した社長、起業した社長という3タイプの卒業生がパネリストとして登壇し、苦労した点や今後のビジョン、今後求められる人材などを議論した。大変興味深い内容だったため、継続していきたいと考えている」

産学連携事業 自治体と協定

産学公連携についてはいかがでしょうか。
「産学連携事業を年間件程度進めており、各自治体とも連携協定を結んでいる。特に成功しているのは多摩信用金庫(東京都立川市)と共催し、経営学部が取り組んでいる『TAMA NEXTリーダープログラム』だ。事業承継のための後継者育成塾で、15期を迎えたが募集開始後すぐに定員が埋まるほどの人気講座だ。受講するとさまざまな学びがあることが浸透しており、参加者はやる気にあふれている。内容が濃く、受講生間のやりとりにも緊張感がある。多摩への貢献という意味で、我々の努力が形になってきている」
将来を見据えた戦略はいかがでしょう。
「23年4月に『データサイエンス学環』を開設した。社会はビッグデータなどを分析し評価・方針決定できる人間を求めている。それができる専門的人材を育成している。データサイエンスが『読み書きそろばん』になりつつあるので、意欲ある他学部の学生にも授業を開放している」
「加えて23年度に、データサイエンスの基礎的な知識と運用経験を積むデータサイエンスリテラシー科目を新設して全学必修にした。約2000人の入学生が卒業までにデータサイエンスの基礎を身につける。これは画期的なことだ」
今後も地域とのつながりを重視していく方針です。
「多摩共創企画のようなイベントを基盤に、大学のシーズと企業・自治体・社会のニーズをすり合わせる場を作っていきたい。クロッシングやデータサイエンスを大学全体のカルチャーに育て、新時代の大学を目指す。企業や自治体に学生を採用してもらうためにも、深い専門性と柔軟で横断的な視野を持ち、かつデータサイエンスを身につけた学生を育てていく。明星大学に大いに期待してほしい」

【2024年1月18日付】

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