インタビュー

次世代工業研究会 会長 

田野倉 寛

若手経営者、工業振興で集う

東京都八王子市は多摩地区の経済をけん引する都内最大の市で、多様な業種、規模を問わず多くの企業が集まる。市内に立地する大学も多く、産学連携も盛んだ。多摩地区が上昇気流に乗るために、八王子市周辺企業が担う役割は大きい。八王子商工会議所工業部会内の若手経営者らが参加する次世代工業研究会(次工研)は、2012年に立ち上がった。設立から8年目を迎えた次工研の田野倉寛会長(京西電機社長)に八王子市周辺企業の動向や次工研の活動などについて聞いた。


コロナ禍 長期化懸念

-次工研の概要や活動について教えてください。

「八王子商工会議所の工業部会に属していた若手経営者らが(12年当時の)会頭の要請を受けて設立した。現在、青年部はあるが、当時はなかった。元会頭の意向もあり、まずは工業部会の中で若手経営者を集め、工業振興を図っていこうという趣旨だった。初代会長は現八王子商工会議所の副会頭で、吉野化成の吉野孝典社長が2期6年間務めた。私が指名を受け2代目の会長となった」

「次工研設立の目的はモノづくりに関する技術勉強会の実施、会員相互の交流とネットワーク構築、工業振興に資する事業の推進だ。八王子周辺の企業は『世界に通用する技術』を持つ企業が数多くある。若手経営者の集う場を作り、企業間に横串を通すことと、できれば受発注のネットワークに広げようと取り組んでいる」

「現在は62社が参加しており、具体的な活動は勉強会や社外から講師を招いた講演会、視察研修などを行っている。中小企業の経営者は取引がないと、大規模な工場を視察する機会はあまりない。こうした、視察研修は年に一回実施、先進工場の見学は経営にも役立つ。また、会員相互で工場見学を行っている企業もある。勉強会も含め、毎月何らかの活動をしている」


-新型コロナウイルスの感染拡大では、企業活動に少なからず影響があったと思います。

「工業関連の企業では影響が大きかったと、それほど感じていない。1-2割受注が落ちたという話は聞くが、半減したという企業は聞いていない。しかし、この新型コロナ禍が長期化すると『厳しい』と感じている経営者は多いようだ。このような中、経営者が最も気を配っているのが資金的な部分。手厚く調達していたり、調達の準備を進めている経営者が多いと思う」

「また、業種によって厳しい部分もある。量産か試作かなど関わっている工程によっても変わってくるだろうが、企業の体力的に、この危機を耐えられる体力を維持しようと務めている。ある企業では仕事量が減少していないにもかかわらず、休業を増やした。仕事のやり方を変えることで可能にした。各企業で考え、工夫して乗り越えようと努力している」

人材マッチング計画

-中小企業が現在直面している課題と将来に向け、取り組むべきことはありますか。

「一番聞くのは人材に関すること。人材が集まらない、または思ったような人材が集まらないといった問題だ。これについては、人材派遣の活用が一つの解決策。派遣先の企業から期間満了時に『この方は優秀だ、社員にしたい』と打診され、その後、社員に採用されたケースがあると聞く。それ以外の解決策としては、次工研の企業が就職活動の時期に集まり、マッチングの場を設けるといったことも計画していきたい」

「後継者については次工研のメンバーは年齢が高くても50代ということで、そこまで深刻ではない。しかし、10年後、20年後となると分からない。後継者問題は多くの経営者が潜在的に抱えており、いろいろなケースを見て知ることが大切だと思う。商工会議所で開くセミナーに参加することや、M&A(合併・買収)など実際に携わっている方の話を聞くことが良いのではないか」

「産学連携は内容によるが、より具体性がないと企業として踏み出せない面があることは否めない。八王子市や商工会議所を通して、企業側に案件を紹介されることがあり、なかには多くの実績やノウハウを持つ企業もある。八王子市を含めた多摩地区にはキラリと光る技術を持った企業が多数あるので、産学連携はもっと盛んになっても良い」

八王子発モノづくり発信

-次工研として今後、力を入れていきたい活動などありますか。

「情報交換だけでもメリットが大きい。小さな事でも、お互い知らないことが多い。最近では新型コロナ対策について、LINEで瞬時に情報交換した。情報交換は今後も有益で、さらに必須になるだろう」

「『八王子発のモノづくり』を発信することと、次工研のメンバーが集まり具体的な製品を作ることを目指したい。それには八王子企業の技術をどう生かすか、リーダーシップと発想力がカギになる。次工研の活動目的にもあるが、八王子市、広い意味での多摩地区の工業界が発展していくことを念頭に置いて活動していく。次工研の製品作りがこうした工業振興に貢献できればよい」

【2020年7月8日付】