変化に強い多様性を持った多摩地区


【有識者インタビュー】
関東経済産業局 局長
藤井 敏彦(ふじい としひこ)氏

東京・多摩地区を中心とし、埼玉県南西部、神奈川県中央部などを占める広域多摩地域。大手企業の有力工場をはじめ、試験研究機関や理工系大学などの教育機関がひしめく。技術力にたけた製品開発型企業や高度な製造技術を有する基盤技術型中小企業が多く集まる。関東経済産業局では地域で活躍する企業や消費者、大学、自治体、関係機関に経済産業政策を打ち出す。藤井敏彦局長に多摩地区の未来について聞いた。


-管内全域の景況感はいかがですか。

「ここ数年をみると堅調ではないか。例えば資源価格が安定し、鉱山開発が動きだすと関連するモノづくり企業も急に動きだす。自動車関連についても比較的好調で肌感覚でいいという声を聞く。いまの時点の経済状況を注視するのは当然だが、今後も社会を支える技術的な基礎条件や環境が同じであり続けると思わない。変化に対するリスクは常に存在する。関東経済産業局では管内の産業構造の変化と課題について分析している。製造品出荷額の上位?業種の変遷をみると、1980―90年代は自動車などの輸送機械や電子計算機、家電製品などの電気機械など多様な業種が産業を支える構造だった。しかし2000年代に入ると電気機械の減少により、自動車関連が突出してきた。地域で事情は違うが関東全域の経済が自動車に寄ってしまっている」

-今後どのような変化とリスクがあるとお考えですか。

「予測するのはきわめて難しいことだが自動車でみれば、コネクティビティ(接続性)、オートノマス(自動運転)、シェアード(共有)、エレクトリック(電動化)の頭文字を取った『CASE(ケース)』に象徴されるように自動車の新しい動きにより、構造改革が既に起きつつある。内燃機関から電気へ変化するように、エンジンがモーターへとシフトする。金属加工によってエンジン部品を作っていた企業に代わって樹脂加工をしていた企業に新たなチャンスがやってくる。技術変革にはプラスとマイナスの側面がある。おぼろげながら近い将来に何が起こるのか。一定の動きがイメージできると思う」

-東京・多摩地区の現状はいかがでしょうか。

「多摩地区は技術の多様性を持っている非常に貴重な地域だ。多様性は変化に対して強い。政策的にも多くのプロトタイプを提供してきた。さまざまな地域経済の政策が多摩地区を見ながら作ってきたといっていい。中でも大きな役割を果たしてきたのが首都圏産業活性化協会(TAMA協会)だ。ある企業が技術を必要としていればTAMA協会が大学の先生を紹介して問題を解決する。地域のポテンシャルを引き出しながら、地域内外の大学との連携で、問題を解決してきた。もちろん多摩地区に限らず、このような取り組みは管内で多数あるが、多摩地区では多くの実績を積み重ねてきた。さらに企業間の関係づくりにも注力した。多摩地区においてさまざまな精密加工、先端技術処理技術など規模は大きくないが実力のある中小企業は多い。受発注関係である大手企業との縦型の受発注関係を残しつつ、同じ地域の横の連携を進め開発型の企業を育てている。多様な技術の融合に力を入れている。常に新しいものづくりのあり方を模索している」

-地域の稼ぐ力を後押しする「地域未来投資促進法」の改正についていかがですか。

「今国会で成立した『地域未来投資促進法』の改正では新しいスキームを活用してくことになる。企業集積を図る自治体の支援を目的とした企業立地促進法を変える。主に製造業に主眼を置いた従来の支援策から観光やサービスなど非製造業にも配慮する内容となる。国の基本方針に沿う形で自治体が基本計画を策定する。企業などの申請を承認した上で支援措置を講じる。製造業に限らずサービスや観光などにも広げ、幅広く支援の対象としている。支援は永遠に未完であり終わりはない。継続的な試みが必要だ」

-今後どのような変化を期待しますか。

「中小企業の弱みはマーケットリサーチに割く人的リソースがないことだ。素晴らしい技術を持っていてもどのように売るかが分からない。これまでは受注元から設計図がもらえたが、これからは自分たちで売るために何を作るかを考えなければならない。どの企業も自社ブランドを作るのが一つの目標になっている。さらに、オープンイノベーションにより開発パートナーシップをみつけ、自分たちでニーズを捉え把握し、自分で作ることが重要だ。多摩地区はじめ中小企業への支援テーマは大きく三つある。一つは大企業との連携、二つ目は地域を越えた動き、最後にグローバル化。このうち一番有効な処方箋は大企業との連携にある。常に大企業はグローバル化を見据え活動ているため、大企業との連携がスムーズに進めば、残りのテーマも同時に解決できる。大企業と中小企業がマッチングできれば双方にメリットがある。そのためにもオープンイノベーションを強化し新しい技術革新を図る。より小回りの利く技術力の高い中小企業が大企業と連携できるよう協力できる相手先を見つけていくことが大事ではないか」

【2017年6月16日付】