2011年3月11日に発生した東日本大震災により林精器製造がある福島県須賀川市は震度6強の激震に襲われた。これまで誰もが経験したことがない5分以上にもおよぶ長く激しい揺れで、本社工場は梁も落ち、床が最大2メートルも垂直落下。3階が2階、1階部分を押しつぶすように倒壊した。被害は甚大で、本社工場の約3分の2の面積にあたる8900平方メートルががれきと化した。
倒壊した建屋には52人の社員が取り残された。加工機械や机などが支えとなりできたわずかな隙間に救われた社員は、互いに声を掛け合い安否を確認し、暗闇のなか励まし合った。余震による更なる倒壊が頭をよぎる恐怖のなか社員は冷静に行動した。たまたま幹部社員が持ち合わせた一本のペンライトを頼りに寄り添い抜け道を探し、這うように全員が無事に屋外に脱出した。
さらに社員の避難後には電気系統のトラブルにより火災が発生し被害に追い打ちをかけた。倒壊した建屋内部での出火のため消火活動は困難を極め、火災は一昼夜くすぶり続け鎮火したのは翌朝だった。
(次回は11月6日(火)に掲載予定)