林精機製造がウオッチケース加工を起源に創業してから90年の月日が流れた。この間に腕時計はクオーツからGPSへと、より高精度なものへ進化を遂げてきた。しかし将来にわたってすべての消費者が高性能な商品だけを求めるかといえば、決してそうでは無く「腕時計の価値観は精度のみでなく、見栄えの美しさの追求から生まれるもの」と林明博社長は主張する。「美しい金属をつくり続けます」。同社のモノづくり思想を象徴するキャッチコピーだ。これは人間の感性のなかでもかなり高い次元の満足度が要求され、基盤となる高い技術力の裏づけが不可欠だ。

時計外装
将来的には同社が得意とするモノづくりと合致する、ロボットによる介護、医療補助具的な分野で、美しさという味わいを加えた製品開発を目指すという。「私にとってのモノづくりは必ず人が関与するもの。フルオートメーシュン的な自動販売機的なものは決してモノづくりではない」と林社長は強調する。そして「人の感性が入ったモノづくりだけが付加価値の高い商品を生み出す」と言葉を続けた。
世界経済のグローバル化により、人が関与しコスト高になるモノづくりを国内で続けることは難しくなっている。だが林社長は、あくまでも人の手による、感性に訴える「美しいモノづくり」にこだわりつづける。