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Vol.1

落合工機(南相馬市)


落合工機 斉藤秀美社長

 東日本大震災から8カ月以上が経過したが、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で厳しい経営を余儀なくされる福島県内の中小製造業は多い。落合工機(南相馬市 、斉藤秀美社長、0244・22・2459)は、金属加工や溶接、塗装などを手がける社員15人の会社。工作機械や医療機器などの部品を製造する。仕事の半分は日立工機向け。主要取引先は15社で、約半数が原発から20キロメートル圏内に立地。震災以降、場所を関東地方や福島県中通りに移して操業を始めていて、数社とは引き続き取引を行っている。
 原発から本社工場までの距離は26キロメートル。地震や津波による本社工場の被害は免れたものの、家族の安否を確認するために自宅に戻った社員一人を津波で亡くした。4月11日に操業を再開したが、当初は社員の約7割が南相馬市外に避難したこともあり、斉藤社長は「これからどうなっていくのか本当に不安だった」と打ち明ける。だがその後は通常操業に戻っている。
 落合工機は震災前の2010年12月に浄水器の製造を新たに始め、中東の農業支援を手がける非政府組織(NGO)のJ―Actionと事業組合を設立。中東・オマーンの企業から浄水器を24台受注した。浄水器の価格は一台300万円。11年2月に200台を追加受注し、製造に本腰を入れる矢先の震災だった。この苦境に、オマーンの企業が復興につなげてほしいとの思いから、さらに500台を発注。斉藤社長は「年商のケタが一つ変わるくらいの大きな仕事をもらった」と驚く一方、「自分が責任を持てる品物を作ることを徹底してきた結果かもしれない」とモノづくりの基本に忠実に取り組んできた自社の姿勢の正しさを再認識している。
 大量の注文にうれしい悲鳴を上げるが、「やはりこれだけの注文をこなすには人が足りない」と話す。浄水器の製造要員として当面、10人ほどを採用する計画を立てている。斉藤社長は「組み立てであれば女性でもできる。仕事をなくした地元の人を中心に採用できれば」と考える。また、浄水器の組み立てと浄水器本体に付着した放射性物質の洗浄を目的に、原発から離れた宮城県柴田町の空き工場を借りることを決めている。
【11年11月29日付 日刊工業新聞より】

 

コスモテック(郡山市)


コスモテック 谷島昇社長

 コスモテック(郡山市、谷島昇社長、024・959・5501)は工場向け省力化機器の設計・製作を主力としている。本社工場で省力化機器を製造し、栃木県小山市の小山技術室では福祉機器などの自社ブランド品の開発拠点としている。
 東日本大震災により、本社工場は建屋の天井が崩壊し、生産現場では機械設備が位置ズレするなどの被害を受けた。震災直後は設備稼働の復旧のめどが立たず、手がけていた省力化機器の部品加工などは外注して顧客の注文に対応してきた。
 最も大きな痛手だったのは大型案件の受注キャンセル。大手電機メーカーグループをはじめとする取引先2社が震災で福島県内の事業所を閉鎖したため、受注が内定していた6億円分が震災から数日後に延期となった。売り上げが大きく減少したため、銀行に融資の相談をしつつ資金繰りに対応する日々が続いた。
 谷島社長は「復旧・復興には原発事故の収束が必要」と訴えるが、収束が長期に及ぶことは確実な情勢。一時期は本社工場の存続も危ぶまれたが、従業員の要望もあり事業継続を決めた。
 震災から9カ月がたとうとする現在、本社工場は設備が復旧し、工場も通常稼働している。復旧に関連した政府の被災地の特別支援などにも期待し、新たな受注案件の獲得に期待をかける。
 とはいえ、原発事故の収束見通しが不透明なため、福島県内の企業を主要顧客としていた工場用の省力化機器の設計・製作事業は厳しいと判断。今後は開発拠点がある小山市で進めている自社ブランドの福祉や環境関連の機器の開発を強化する考えだ。
 また9月には栃木県那須町で第三の拠点となる新工場を稼働させた。環境事業の中核と位置づける同工場では廃プラスチックから重油などの燃料を精製する油化装置を自治体向けに製造する。廃プラスチック油化装置は粉砕した廃プラを約600度Cで溶解し、燃料を生成する。同社の装置は電磁加熱を利用するため、廃プラから燃料への変換効率が90%以上と高い。廃プラの処理に取り組む自治体からすでに引き合いが来ており、初年度は2億円の売り上げを見込む。
 これらの巻き返し策で震災の前への早期の事業規模回復を狙う。
(企業HP:http://www.cosmotec-co.jp/
【11年12月6日付 日刊工業新聞より】

 

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