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Vol.3

羽田工業所(郡山市)


羽田工業所 黒田美和子社長

  羽田工業所(郡山市、黒田美和子社長024・944・1238)は重油タンク、ホッパーといった製缶や乾燥機、排ガス処理機、コンベヤなど産業用機械を手がける。設計から製作・工事までを一貫してできる総合力が強みで、都道府県向けの公共工事関連や県内外の企業向けに納入している。
 東日本大震災では壊滅的な直接被害はなかったものの、仕入れ先の生産活動や物流機能の停止といった間接被害により、震災前までに獲得していた受注24件、金額で約4000万円がキャンセル・延期となった。
 同社では2009年に新工場が完成。10トンの大型天井走行クレーンを備える福島県内でも数少ない設備を武器に、新事業分野として大型製缶ものの強化に取り組んできた。
 そこに襲ってきた震災。従業員の生活基盤も県内にあるため生産拠点の移転は難しいと判断。県の「ふくしま復興特別資金」の融資を受けて、先行き不透明な状況に対応した。
 間もなく震災から1年を迎えるが、現在の状況については、復興需要や震災前に延期となった案件が徐々に回復し、火力発電所関連などで引き合いが増えてきた。黒田社長は「今はまだ、建屋外観などの仕事が忙しいと聞いている。当社のように工場内に導入する設備関係は、落ち着いてきてから増えるのでは」と見通しを示す。
 とはいえ、事業環境が厳しいことは変わらない。「受注の動きが出てきたとはいえ、短納期かつ低コストでの要求が強く、中身が原価割れの仕事もある」と黒田社長。総重量が重い大型処理設備などを半年でなく2カ月で納入するように依頼されたり、コストでも約20%減を要求されることも多いという。このため、材料、人繰りといったコストダウンの努力に追われる。「大企業と違い、人材も限られている現状では先行きが不透明」(黒田社長)と慎重だ。
 ただ、それでも仕事のキャンセルが相次いだ震災直後に比べ、「仕事自体が動き出したのは明るい兆し」という。黒田社長は「仕事をしたくでもできない会社だってある。それを考えるとこれからは『できない』ではなく、『どうすればできるか』を考えなければいけない」と事業継続への意気込みを示す。
(企業HP:http://haneda-kogyosho.co.jp/
【12年1月31日付 日刊工業新聞より】

 

サンビックス(郡山市)


サンビックス 猿渡旭社長

 サンビックス(郡山市、猿渡旭社長、024・933・5755)は創業以来、一貫して顧客第一主義を掲げてきた。「製品はお客からの預かりもの。それをどう扱うかで会社の評価が決まる」と猿渡社長はきっぱり。  亜鉛やニッケルのメッキ処理を主力とし、手がける分野は電子・半導体などの精密部品から自動車や建設機械向け金属部品まで多岐にわたる。年間で280社から約1万3000件の受注があり、受注から納品までをシステム化した一貫管理体制に強みを持つ。
 東日本大震災では排水処理施設や配管などの工場設備が損壊し、生産活動の停止を余儀なくされた。「顧客への製品供給は止められない。供給責任を果たすため、いち早い稼働を目指した」(猿渡社長)。管工事会社は修理依頼の殺到で工事にきてくれず、社員の通勤車両のガソリンも不足する中、全社を挙げて復旧に努め、震災から1週間後にはほぼ全面稼働にこぎ着けた。2011年12月期の決算でも増収を確保し、震災の影響を最小限に抑えた。
 技術力の高さには定評があり、亜鉛メッキ製品でのウィスカ(ひげ状の亜鉛単結晶)の発生を抑制する自社開発技術「ゼロウィスカ」が多くの顧客に採用され市場を拡大している。ウィスカの飛散は電子機器のプリント基板での短絡障害などの原因となる。試行錯誤しながら確立した処理技術により、ウィスカの発生をなくし、電子機器などの品質安定化に寄与している。
 地球環境保全への対応では六価クロムを全く使用しない防錆処理技術「ゼロクロム」を開発し、グリーン調達を推進する多くの企業に納品している。
 新規分野の開拓にも積極的で昨年7月には、顧客からの要請もあり銀メッキラインを新設した。被災地では復旧事業の進展に伴い銀メッキ部品が使用される配電盤や各種制御盤などの需要が高まっており、このような状況に対応した。
 猿渡社長は「今後も単なるモノづくり企業ではない技術開発型企業を目指す」と強調。顧客企業との連携も図り、メッキ技術を核にその前後工程も含めた技術開発を推進し、顧客ニーズに応えた付加価値の高い製品開発に取り組んでいく構えだ。
(企業HP:http://www.sambix.co.jp/index.php
【12年1月24日付 日刊工業新聞より】

 

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