ドイツ西部に位置し、オランダとベルギーに隣接するNRW州。州内には2つの国際空港を含む6つの空港、世界最大の内陸港をはじめ充実した交通、物流インフラを背景に、進出企業は世界中1万社を超える。その多くがグローバルビジネスの中核拠点として、欧州統括機能を備えるほか、研究開発拠点としての重要性が高まっている。
世界中からの投資を呼び込む同州のアドバンテージは、欧州市場への抜群のアクセス拠点という地理的要因だけではない。あらゆるビジネスに理想的な投資環境を提供する豊富な産業集積にある。世界トップレベルの鉄鋼や化学、自動車産業が中心の経済交流だが、近年はそれに加え、最先端技術での連携へとすそ野が拡大しつつある。電気自動車や再生可能エネルギー、医療技術-。世界が一様に直面する課題解決につながるイノベーションを促す大胆な政策をNRW州が積極的に展開していることが活発な産官学連携の原動力だ。
2011年春-。NRW州ボーフム市に日本の大学発ベンチャーの現地法人が設立されたのは、それを端的に象徴する最新トピックスだ。筑波大学発ベンチャーのサイバーダインは、介護やリハビリに使う装着型ロボット事業を欧州で展開するにあたり、NRW州を戦略拠点に選んだ。NRW州は医療機関への導入を通じ普及を後押し。素材開発では化学大手バイエルグループも協力する。医療技術分野における日本とNRW州のメディカルクラスターとの交流は、ここへきて急速に活発化しており、デュッセルドルフで開かれた世界最大の医療技術見本市「MEDICA」にも多くの日本企業が参加。新たな日独連携を模索する動きが広がる。ともに少子高齢化が進む成熟国家として、共通する社会課題の解決に挑む。